利益を圧迫する余掘りとは?実現可能な余掘り量低減システムとICT技術

利益を圧迫する余掘りとは?実現可能な余掘り量低減システムとICT技術

 

 
山岳トンネルや地下大空間などの大規模な掘削工事において、現場の利益率と工期を密かに、しかし確実に脅かす存在があります。
それが余掘り(よぼり)です。
 
かつての土木業界では、自然の岩盤を相手にする施工の不確実性から、余掘りの発生は一定程度避けがたいものとされ、設計・積算上あらかじめ見込まれることが一般的でした。
 
しかし、資材価格の高騰や深刻な熟練工不足に直面している現在の建設業界において、その常識は通用しなくなってきています。
 
今、余掘り量の低減こそが、現場が取り組むべき最大のコスト削減策として注目を集めているのです。
 
本記事では、余掘りの基礎知識と発生メカニズムを分かりやすく整理した上で、既存の重機に後付け可能で、
若手オペレーターでも熟練工並みの精度を実現できる最新のICT技術をご紹介します。

「余掘り」とは? なぜ現場の利益を圧迫するのか

 

 
現場の利益を守るためには、まず余掘りという現象が引き起こす経営的ダメージを正確に把握しておく必要があります。

計画断面を超えた過剰な掘削

余掘りとは、設計図面で定められた本来の掘削断面を超えて、外側へ余分に大きく掘りすぎてしまうことを指します。
 
特に、爆薬を使用して岩盤を砕く爆破掘削などの発破掘削においては、爆発の威力を完璧にコントロールすることは難しく、
どうしても計画ラインよりも大きく岩盤が崩れ落ちてしまう余掘りが発生しやすくなります。
 
この想定以上に掘りすぎてしまった空間が、現場にさまざまな痛手をもたらすのです。

余掘りがもたらす3つの痛手

余掘り量が増えることは、単に穴が大きくなるということではありません。
現場のコストと工期に直結する大きな痛手(デメリット)は以下の3つです。それぞれ詳しく説明します。

● ズリ(掘削土)処理費の増大
 
● 覆工・吹付コンクリート代の莫大な増加
 
● サイクルタイムの悪化による工期遅延

余分に掘削した土砂(ズリ)の積み込みや運搬、処理費用が追加で発生し、コストを圧迫します。
同時に、掘りすぎた空間を埋め戻すための吹付・覆工コンクリートの材料費も莫大になります。
 
さらに、ズリ搬出やコンクリート吹付の手間が増えることで1サイクルの作業時間が延び、
全体の工期遅延と労務費・機械損料の増加という悪循環を招いてしまうのです。

余掘りが発生する 2つの主な原因とは

 

 
では、なぜ設計通りにぴったりと掘削することができないのでしょうか。
余掘りを防ぎ、低減させるためには、その根本的な原因を理解し、対策を打つ必要があります。主な原因は大きく2つに分けられます。
 

原因①:発破のための削孔精度のバラツキ

発破掘削において、余掘り発生の最大の要因となるのが削孔(さっこう)精度の誤差です。
 
発破を行うためには、まずドリルジャンボと呼ばれる大型削岩機で、岩盤に爆薬を装填するための無数の穴(発破孔)を開けます。
この時、ドリルの位置や角度、深さが計画から数センチ、数度ズレるだけで、爆破後の仕上がり断面には数十センチの誤差(余掘り)となって現れます。
 
これまでは、暗く狭い切羽で正確な穴を開ける作業は、長年の勘と経験を持った熟練オペレーターの職人技に依存していました。
そのため、作業員の熟練度によって精度に大きなバラツキが生じ、余掘り量が増加してしまうのが実情でした。

原因②:事前の「地山評価」の不足による過剰発破

もう一つの大きな原因が、目に見えない地山の状況判断の難しさです。
 
トンネルを掘り進める際、切羽の奥の岩盤が「硬い」のか「軟らかい」のかによって、装填する爆薬の量や発破パターンを変える必要があります。
 
しかし、岩盤の硬軟変化を正確に予測することは困難です。
もし、想定よりも岩盤が軟らかかったり、隠れた破砕帯が存在したりするにもかかわらず、硬い岩盤用の強めの発破を行ってしまうとどうなるでしょうか。
 
必要以上に岩盤が崩落し、大規模な余掘りが発生してしまいます。安全のために強めの発破を選択しがちな現場の心理も、余掘りを助長する一因となっています。

実現可能な余掘り量低減システム!後付けできる最新ICT技術

 

 
これまでは熟練オペレーターの勘や経験に頼るしかなかった余掘り対策ですが、現在はICTの力で確実な対策が可能になっています。
 
ここでは、カテックスが提供する、既存のドリルジャンボに後付け可能で導入しやすい、最新の余掘り量低減ソリューションを2つご紹介します。

解決策①:削孔精度を飛躍的に向上させる【M-ASSIST】

属人的な削孔精度のバラツキを無くし、誰でも正確な発破孔を開けられるように開発されたのが、
モーションキャプチャー技術を活用した削孔ナビゲーションシステム【M-ASSIST】です。

 

●システムの仕組みとメリット

M-ASSISTは、ドリルジャンボのアームの動きをセンサーとカメラで精密に捉え、運転席のモニターに「今ドリルがどこを向いているか」「計画通りに穴を開けるにはどう動かせばいいか」をリアルタイムで分かりやすくガイド表示します。

●現場の課題解決

オペレーターは、暗い現場で目視に頼る必要はなく、モニターのナビゲーションに従って操作するだけです。これにより、若手や経験の浅いオペレーターでも、計画図どおりの正確な削孔が可能になります。結果として、計画通りの発破が実現し、余掘り量を劇的に低減させることができる画期的なシステムです。

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解決策②:地山性状を予測し最適発破を導く【DRISS】

「切羽の奥がどうなっているか分からない」という地山評価の課題を解決し、過剰な発破を防ぐのが、
ドリルジャンボを利用した前方地山探査システム【DRISS(ドリス)】です。

 

●システムの仕組みとメリット

DRISSは、発破孔やロックボルト用の穴を開ける際の「ドリルが押し込まれる速度」や「打撃の圧力」といった機械の動作データを自動的に収集・解析します。このデータをもとに、切羽前方の地山がどの程度の硬さなのか、割れ目はないかをリアルタイムに予測・評価します。
 

●現場の課題解決

勘や目視による推測ではなく、削孔データという客観的な数値に基づいて地山を評価できるため、その岩盤に最も適した「最適な発破パターン」を選択することができます。過剰に爆薬を使用して岩盤を壊しすぎることを防ぎ、安全かつ経済的な掘削を実現します。

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まとめ|余掘り量低減は「システム」で解決する時代へ

 

 
「余掘りは仕方がない」という時代はすでに終わりました。余掘り量の低減は、無駄なコンクリート材料費やズリ処理費といった莫大なコストを削り落とし、工期を短縮し、施工性の向上を図ることができます。
 
今回ご紹介した【M-ASSIST】【DRISS】のような最新のICTシステムを導入することは、単なる技術の導入にとどまりません。
「熟練工が不足している」「若手が育たない」といった建設業界全体が抱える人材課題をカバーし、
現場の安全性と生産性を同時に高めるための手段のひとつです。
 
既存の重機に後付けできるこれらのシステムで、ご紹介したICT技術を積極導入することで、現場での課題低減の一案としてはいかがでしょうか。

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